意外かも知れませんが、従来のロボットは、ケーブルをつかんで差し込むといった、人間なら簡単な作業がうまくできませんでした。ロボットは形が定まらないものを認識するのが苦手で、とくに細くて柔らかいケーブル類を扱うのは困難です。そのため、電子機器などの組み立て工場では、最先端の自動化されたラインでも、配線作業だけは人間が行わざるを得ませんでした。
そこで目をつけたのが、クラボウが持っていた3Dビジョンセンサー技術。もともと繊維の染色工程で色を見る技術から発展したカメラと画像処理技術を活用して、ケーブルをつかませようとしたのです。ところが、そう簡単にはいきません。グニャグニャしたケーブルを逐一認識しながら処理すると膨大なデータ量になってしまい、非常に時間がかかるのです。
開発が行き詰まって頭を抱えていた頃、最先端の組立工場を見学する機会がありました。無数のロボットアームが効率よく動いて製造ラインが流れていく中で、そこだけ人間が作業している一角が。そう、ケーブルを接続する工程です。 やはりここでもか、と思いながら巧みに素早く配線を行う作業員の動きを観察していて、ふと閃いたのです。「ケーブルはグニャグニャしているから差し込みにくい。しかし、その曲がり具合を瞬時にとらえながら、差し込む手の角度を無意識に決めているのでは!」そのインスピレーションをヒントに改良を進めた結果、どんな曲がり方も瞬時に計測してケーブルを差し込めるアルゴリズムを開発。より人間の対象認識や動き方に近づけた高速3Dビジョンセンサー「クラセンス」が完成しました。
クラセンスは、従来のロボットが苦手としていたあらゆるケーブル類に対応します。フラットタイプのものや束になった多芯のもの、コネクタ付きのものをはじめ、透明な光ファイバーまで。しかも、わずか0.5ミリの細いケーブルを2ミリの穴に挿入する作業を、約2.5秒でミスなくこなせるのです。※
ケーブルの配線作業は、自動車や家電、電子機器などの組み立てに欠かせません。しかも、機器の小型化や高度化に伴い、ますます緻密で高精度な作業が求められています。世界中のほとんどの工場が人手に頼っている工程をクラセンスは自動化します。人間より速く、正確に、24時間休みなく動き続けるのです。現状のクラセンスはケーブル作業に特化していますが、将来の応用範囲は無限大です。形の定まらないものが苦手というロボットの弱点を補い、活用範囲を格段に広げます。たとえば、農作物の収穫を行ったり、料理を盛り付けたり…。もちろん、本家本元の繊維の縫製などアパレルも忘れてはいけませんね。
※ロボットがハンドリングできるケーブルの種類や
作業内容は条件により異なります。
日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイなどでシリーズ展開中
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